長い冬がはぐくむ、強く、美しいスイートピー
カクタ花農場/栃木県
- 温暖なエリアに産地が多いスイートピー。そんななかでは珍しく、冷涼な栃木県上三川町でスイートピーを栽培しているのがカクタ花農場です。低温期が長い栃木県の気候を生かし、強く、美しいスイートピーを生み出しています。
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マイナス10 度の気温でも二重カーテンは使わず、スイートピーに必要な日照量をたっぷり確保。安定した日照量と低温が病害虫に強い丈夫な花を生み出すそう。
- 本州最北端のスイートピー農家
- とはいえ、周囲はイチゴやトマトの野菜農家が多く、スイートピーを生産しているのはここカクタ花農場のみ。角田家も以前はカンピョウやニラなどの野菜農家でした。そんななかスイートピー生産を始めて30年近くになる角田さん。なぜスイートピーを選んだのですか?とたずねると、「人とは違うものを作りたかったんだよね。市場で見て花がきれいだなーと思って」と穏やかに笑います。そしてもうひとつの大きな理由は、薬剤を極力少なく栽培できるということ。カクタ花農場では種を播くときに微生物を使った生物農薬を使う程度で、花が終わった後の土壌消毒も太陽熱で行うそうです。
- 持続可能な環境での花づくり
- この自然に近い環境での花づくりは、角田さんのこだわりのひとつ。それは第一に、働く人を思ってのことです。スイートピーは巻きひげを取ったり、ぐんぐん伸びる長い蔓をおろしたり、ほかの花と比べても作業が多く、栽培にとても手間がかかる花。カクタ花農場では、毎日12~3名のスタッフがフル稼働で作業をしています。「人がいないと作業ができないから、できる限り薬剤を少なくする方法を模索しながら構築してきました。うどんこ病なんかは出るけれど、人間にとっての風邪みたいなもので、薬を使わなくても時期を待てば治るんだよ。植物自体の力を強く育てていれば“治る力”を持っているものなんです」
種を播く9 月頃にハウス内の気温を十分に下げることで生育に大きな差が生まれるため、屋内にも空気が十分に循環するよう屋根の高いハウスを採用している。
植物の生理生態を知って、その力を最大限に引き出すための環境を整える。それには天井の高いハウスで空気の循環を良くしたり、ハウスにはカーテンをつけず日照量をたっぷり確保したり、手間も費用もかかります。それでも「人にも自然にも影響の少ない、持続できる環境で花づくり」にこだわり続ける。それが角田さんのスイートピーが、強く、美しい秘密です。
(取材:2018年11月)
カクタ花農場の代表的品種ともいえる「ピンクラム」。角田さんがスイートピー栽培を教わった師匠のオリジナル品種で、お孫さんの名前から名付けられたそう。
![](https://www.aoyamaflowermarket.com/client_info/PARKCORP/itemimage/pr_kakuta_6.jpg)
豆科のスイートピーは蔓がどんどん伸びるため、蔓を下ろしたり、巻きひげを取ったりと作業が非常に多い。1,000 ㎡の花を栽培するのにかかる時間は4,423 時間(バラの場合は1,608 時間)といわれている。
![](https://www.aoyamaflowermarket.com/client_info/PARKCORP/itemimage/pr_kakuta_5.jpg)
洗濯ばさみを使って蔓を留める栽培方法は宮崎県のスイートピー農家と情報交換をする中で教わったそう。洗濯ばさみは特注したオリジナル。一般的なものよりも幅が狭くて隣の蔓に当たらず、輪が大きくて茎を留めやすい。
PRODUCER’S DATA
カクタ花農場
(栃木県上三川町)
栃木県の南部に位置する栃木県河内郡上三川町、10,000㎡の敷地に5つのハウスで花き栽培を営む。スイートピーを中心に、ジニア、ユーカリなど年間を通して8品目を生産・出荷。2004 年からスイートピー栽培を始め、代表的なピンクラムなど7品種を生産。農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えて、自然に近い環境での花づくりを実践している。
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