好きで、楽しんで、作るばら
Rose Farm KEIJI/ 滋賀県
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2018.10.01 UP
多くのフローリストが好きなばらとして名前を挙げる、ローズファームケイジの「わばら」。ばら作家の國枝啓司さんが手がけるオリジナル品種は、可憐でありながら見る者を惹きつけてやみません。その不思議な引力の秘密を探しに、滋賀県守山市にある農園を訪ねました。 -
- 花の近くにいる人が、一番幸せであるように
- 透き通るような花びらが、ゆったりと重なり合う花。その重みでしなう、たおやかな茎。風にそよぐ軽やかな葉。顔を近づけたときに初めて花をくすぐる、やわらかな香り。ローズファームケイジの「わばら」は、何かが突出して個性を主張するのではなく、日々の風景になじむ調和のとれた美しさがあります。家で飾ってもらえるように、花の近くにいる人が一番幸せであるように―。ばら作家の國枝啓司さんは、そんな想いを込めてばら作りに取り組んでいます。
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- 自然に近い環境を作ったら、あとは「ばら任せ」
- 農園に足を踏み入れると、ふかふかとした土の感触が足元をとらえます。この土こそがローズファームケイジのばら栽培の最大の特長。「うちの栽培は、ばら任せ。ばらは自分でちゃんと考えて生きているからね。自然に沿った、循環する土作りをするのが僕の仕事」と啓司さん。近所の山から拾ってくる木くず、落ち葉などの有機物、微生物を入れて土を作ったら、過剰に栄養を与えたり、人間の都合に合わせて操作したりはしません。「病気にも弱いし、生産性も悪いし、生産者としてはかなり変人」と啓司さんは笑います。
- 常識に捉われず、ばら農家の在り方を考え続ける
- そう、ローズファームケイジは花の生産者としては型破りです。長男の健一さんが考える「わばら」のコンセプト設計も、そのひとつ。「もともとバラ農家を継ぐ気はなかった」という健一さんは、大学卒業後に一般企業に勤めた後、起業しようと独立。起業のコンテンツとして着目したのが、父の啓司さんが作る「わばら」でした。「新品種という0から1を生み出す、これ以上細分化できない原点にいることを大切にして、純度の高いもの作りの追求、その中で生まれる哲学を基礎にバラ農家の在り方を考えています」(健一さん)。現在は世界中に生産パートナーを持ち、「WABARA」という形での発信も行われています。
- 「好きやから作る」ピュアな想いがそのまま花の魅力に
- 啓司さんが思い描いた通りのばらが誕生したのは、育種を始めてから約25年後だったとか。新品種誕生までには、私たちの想像をはるかに超える歳月を要します。現在「わばら」は約60種。オリジナルだけでブーケにしても美しくなるよう、色のグラデーションを意識して育種しているといいます。バラを切っては手元で束ねて「自分で作ってても、このグラデーションきれいやなぁ思うわ」とにこにこ話す啓司さん。「自分で好きなものしか作らへん。“売れるから”よりも“好きやから”作ってる方が伝わるでしょ?」。ローズファームケイジのファン多しといえど、誰よりも啓司さん本人が好きで、楽しんで作っている。啓司さんが作る「わばら」がピュアな魅力に満ちて、人を惹きつける理由はここにあるようです。
PRODUCER’S DATA
Rose Farm KEIJI /ローズファームケイジ
(滋賀県守山市)
ばら作家の國枝啓司さんが手がける60 種以上のオリジナル品種を「わばら」と銘打ち、「生きたばらをつくる」をコンセプトに流通に合わせた過剰な操作を加えず、自然に則したばらづくりに挑む。現在は国内だけではなく世界中に生産パートナーを持ち「WABARA」という形で発信を行っている。
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