摘んでから、まっすぐお客様のもとへ。生産者レポート PRODUCER'S REPORT

就農三年目にして、最高賞受賞。
九州のカーネーションを牽引する若き奇才(浜塚剛さん)

Tsuyoshi Flower 浜塚 剛/長崎県

長崎県雲仙市の瑞穂地区は、九州有数のカーネーション産地。その中でもひときわ若い30代の浜塚剛さんは、花き業界注目の逸材。長崎県花き品評会で最高賞の県知事賞を連続受賞するなど、飛躍的な実績を積み上げている。
―― こうしてハウスに伺って、まずはその整然とした美しさにびっくりしました!これまでいろいろなハウスを見てきましたが、こんなに綺麗なハウスは初めてです。
花にとって最適な環境づくりとして、圃場(ハウス)の管理には非常に気をつかっています。 同時に、圃場も含めて自分の仕事だから、誇りを持って他の人にも見せられる圃場、ということを常に意識しています。農業って、今もまだ泥臭いとか、そういうイメージがあるでしょう?僕はそう思われたくなくて。たとえば、いわゆる一流企業の綺麗な社屋に勤めている自分の同級生にも、ここが僕の仕事場だって誇れる場所でありたい。従業員の方々にも、ここが自分の職場であるというプライドを持ってもらいたいんです。
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―― 先代から数えると、40年をこえる歴史あるカーネーション農家ですね。 栽培や管理についてお父様に相談されることもありますか?
父が圃場に来ることはほとんどなく、現在は一人で管理しています。この仕事で生きていく覚悟はできているので、失敗も、成功も、全部自分で受けとめます。父の長年培ってきたキャリアには勉強すべきところが多いですが、今は栽培方法の幅が広がっていて、パソコンなどのIT機器を使うことも、その一つ。僕は、常に最先端をめざした農業をやりたいんです。
浜塚さんの栽培方法の特色としてあげられるのが、徹底したIT管理。 長崎のカーネーション農家では初めての試みだ。自身でハウスにLANケーブルを敷設し、日照時間、照射角度、温・湿度、炭酸ガス濃度など、ハウス内の状態を測定する機器と接続。そのデータは1分間隔でハウス傍の作業小屋に設置されたPCに送信され、数値やグラフで常に推移が確認ができるようになっている。
今は主に、これまでの栽培方法をデータ化して蓄積することに注力しています。まずは、長年培われてきた生産者の「勘」や「感覚」の部分を数値化したい。来年からはそのデータをもとに、施肥の量やタイミングをはかり、病気や虫害への対策を行うつもりです。

しっかりデータをとることで、何か問題が起きたときに、データをもとに体系的な対処法を考えることができる。 最高のカーネーションを作るために障害となっているポイントを一つ一つ潰して、後戻りすることなく、究極のカーネーション栽培に近づけていきたいんです。
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―― 長崎には意欲的な若手の生産者が多いですね。同世代で意見交換などのやり取りはありますか?
仲間がいるということは、心強いですね。収集しているデータも含め、自身が栽培から得た経験は、カーネーションを作っているかどうかに限らずすべて仲間に共有しています。それは、花に対してフェアでありたい、という気持ちもあるし、自分だけではなく、長崎ひいては日本全体の技術力の底上げになれば、と思うから。逆に、他の花で起きた失敗の対処法から、カーネーションに活かせるヒントをもらうことも多いですよ。
―― 花を食べて状態を調べる、という噂を聞きました。本当ですか?データ化されたIT農業とは対極にあるような気もしますが。
本当に食べてます。笑 花の栄養は、要は糖分。それがしっかりと上まで上がってきていれば、綺麗な花が咲く。カーネーションは時期もそうだし、厳密に言うと一日の中の昼と夜とでも、栄養の循環具合が違います。だから、花や茎やいろんな部位を食べて、今どこまで栄養が回っているか、過不足がないかを、自分の舌で確かめるんです。農業には、データだけでは分からない、感覚で補う箇所も間違いなく存在するので・・・大切なのはバランスです。
―― バランスと言えば・・オフの日は、何をしていますか?
休みの日には、近所の仲間を作業小屋に呼んで鍋をしたり、楽しんでますよ!この山奥なら、どんなに騒いでもご近所さんに迷惑をかけませんから。笑
―― 浜塚さんが花生産の中で今後実現したいことは、何でしょうか?
まさに今、新しいハウスを建設して栽培面積を増やしている最中。将来的には50アールまで規模を広げ、生産性の高いものと希少性のあるものをうまく組み合わせた経営がしたいですね。

カーネーションの新品種は現在ほとんどが海外で開発され、種苗会社が買い付けてきて、数年の試作を経て国内の農家に分配されます。 昨年から、その国内生産前の苗を試作して選抜するメンバーになりました。 僕がダメって言えば、その品種がどんなに可愛くても日本で日の目を見ることがない。結構な緊張感があります。 だからこそ、徹底的に調べ上げて、結果を出す。それは、普段市場に出しているカーネーションにも共通すること。 自分が作るものは、まずは3年、自分の栽培スタイルでその魅力が十分に引き出せるかどうかしっかり検討します。 その中で、作りやすいものと合わせて、多少作りにくいものでも他の人が作らない特色のあるものを敢えて植えたり。 自分らしい生産スタイルを追及したいと思っています。
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―― 他の花を作ることもできると思いますが、あくまでカーネーションにこだわる理由は何かあるのでしょうか?
単純に、好きだから。しかも、努力した結果が目に見えてきているし、失敗があっても、1個1個改善するのが面白いんですよね。乗り越えた時には、自分の自信につながるというか。毎日が充実していて、楽しいです。あくまで、カーネーションに活かすつもりで、なんですが、ラナンキュラスを育てたりもしていますよ。全然違うから、びっくり。でも、ラナンをやって改めてカーネーションの良さが実感できたり、改善点が見つかったり。日々、勉強です。
―― 最後に、浜塚さんの目指すカーネーションとは、どんなものでしょうか?
目指すのは、"excellent flower"。言葉で表せない、これ以上の花はないっていうものを作りたいんです。具体的に言うと、お客様のもとで最後まで咲き誇ることだったり、ラメがのっているように花びらがキラキラ輝くことだったり。スプレーカーネーションって、小さい蕾までは咲かないっていうイメージがありますよね。うちのは、絶対に咲きますから!常にお客様に満足していただける花を供給し続けるために、出荷時期を正確に読む技術とか、ハウスから出た瞬間の品質をキープして出荷するための水揚げ剤に対する知識の必要性なども、感じています。

カーネーションでは輸入が市場を席巻している側面もありますが、僕はこの場所で世界に勝てるカーネーションを作り、お客様に最高のカーネーションを届けることにこだわり続けます。

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PRODUCER'S
DATA

浜塚 剛( TSUYOSHI HAMATSUKA )

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●1970年、初代がカーネーション生産をスタート。
●2008年、2代目の剛さんが若干22歳で就農。
●2009年、自身のブランド「Tsuyoshi Flower」を設立。
●2010年、長崎県花き振興協議会の品評会で、最高賞の長崎県知事賞を受賞。
●2012年、オランダで開催される10年に一度の花の祭典「フロリアード」に長崎県の代表として県オリジナル品種「だいすき」を出展。
ITを導入して常に最先端の農業をめざす熱い姿勢は、カーネーション業界の雄として大きな期待を寄せられている。